学生が政治の本を出す?!
―「一冊は自分の本を出してみたい!」
という夢をお持ちの方も多いと思います。
でも、それは遠い夢ではありません。
学生だって、本を出している人たちがいます。
それも、政治の本。
本日は、日本の教育政策を自分たちで考察し、まとめた書籍を出版された、「
学生による教育再生会議」さんにお話を伺いました。
本日はよろしくお願いいたします。
藤崎、狩野、田代よろしくお願いします。
―まず、この「学生による教育再生会議」というのは、どういった団体なのかか
ら教えてもらえないでしょうか?
藤崎はい。一言で言うと、教育政策の勉強会です。
政府に教育再生会議と言うものができて、検討をしていますが、そこで出た政策
について私達の視点で再検討をして、独自の提言をするというものです。
―なるほど。政府が行っていることを、学生が模擬的に行うということですね。
藤崎そうです。
コンセプトは、「客観的に教育を語る」ということです。
教育政策を見ていて思ったのは、客観的なデータに基づいてちゃんと議論されて
いないのではないかと言うことです。
それぞれの立場の人が、それぞれの個人的な意見を言い合っているだけのように
しか思えませんでした。
そこから出てきた提言も客観性を欠いたものになってしまっているのではないか
と、疑問をもちました。
それらの提言を私達で再度検討し、客観的な政策提言をしたら面白いんじゃない
かと。
―そんなに政策って現場とかけ離れているものなんですか?
藤崎やはり、マスコミが報道していない、世間に知られていない実態があると
思います。
現場を見てみれば分かることなんですが、そういう実態を反映した政策になって
いません。
多くが、根拠に乏しい仮説であって、政策として考えられていないと思います。
教育研究者は、研究が面白くてやっているようで、本当に現場のことを思ってい
るのか分かりません。
だから、私達がしっかりとした現場の客観的な情報をベースにした政策を提言し
て、それにパッションのある政治家が付いたらすごいなと。
―なるほど。
最善の政策を提言する冷静さと、それを実行するパワーという組み合わせを実現
したいと。
最終的には提言をまとめて、本にされたわけですね。
藤崎はい、そうです。
おすすめ!プロジェクト型学生勉強会
―このようなことは、どうして思いついたのですか?
藤崎まず始めに、私は6年生なんです(笑)
なにが言いたいかというと、6年間も大学にいると言うことは、先生達のお話を聞
いて、政治のことを考える時間がすごく長かったんです。
でも、その中で感じた問題意識を具体的に説明できませんでした。
そんな時、安倍晋三さんが首相になって、「教育を再生する」と言われたんです
。
それで私も何か意見を持ちたいと思いました。
それが、2006年10月中旬です。
―メンバーはどのように集めたのですか?
藤崎まず、GEILという政策コンテストに以前参加したのですが、そのときに出
会った人に声をかけました。
それから、自分の居る教育学部の人間にも声をかけて、それ以外にも興味のあり
そうな人に声をかけました。mixiで誘ったりもしました。
―良く集まったと思うのですが、どう呼びかけたのですか?
藤崎ストレートに「教育政策の勉強会をやろう」という趣旨で呼びかけて集ま
りました。
出版しようというのは、その後のことです。
―なるほど。志の高い方ばかりなんですね。
では次に、政策を作るに当たって、どのように進められたか教えてください。
藤崎まず、半年というタイムスケジュールを設定しました。
扱うテーマは教育再生会議の検討対象と同じものです。
教育再生会議には「学校再生分科会」「規範意識・家族・地域教育再生分科会」
「教育再生分科会」という分科会がありましたので、これを踏襲したということ
です。
そして、この半年間の間に班で活動して、3回シェアするということにしました。
―なるほど。面白いですね。最初から期限を決めているわけですね。
藤崎はい。
一言で表現すると、「プロジェクト型勉強会」ですね。
もっと言うと、出版を目標にしたプロジェクト型勉強会です。
勉強会を運営するノウハウ
―なんだかワクワクする活動ですね。
多くの学生がこういう勉強会を作ったら良いと思いました。
ところで、政策検討のやり方については、班に分かれてしまうと、やり方がバラ
バラになってしまわなかったのですか?
藤崎これは事前に政策を議論する際のフォーマットを作ることで問題はありま
せんでした。
フォーマットというのは、こんな感じです。
(1)行政が何を「問題」にしているのか
(2)なぜ「問題」が問題かの根拠
(3)問題の要因分析
(4)政府の政策に対する代替案
―なるほど。考えられていますね。
具体的にどのように一つ一つのテーマを検討していったか、事例があれば教えて
ください。
藤崎たとえば、「学校選択制」というのがあります。
これは、政府の教育再生会議としては、
「学校選択を進め、生徒の人数に応じて予算を配分し、がんばる学校に予算がま
わり、がんばっていないところが淘汰される仕組み」
と定義しています。
学校間の特色が出て、親が学校を選ぶことで、学校どうしが高めあうことを狙っ
ています。
品川区では外部評価制度があって、特色を評価されたりします。
でも実態は、たとえば小学校での英語教育とか、学年間の交流など、どの学校も
その時のトレンドに乗っていて、あまり特色が出ていませんでした。
調査してみると、学校選択制のメリットは、”荒れている学校を避けられる”と
いうことでした。
ですので、選ばれない学校に行く子供の環境は悪くなります。
学校を選択できても、学校が高めあうというメリットは享受できないですし、逆
に荒れている学校がどんどん廃れていくという悪循環が見えてきました。
結局、親が求めている学校を作るには、特色のある学校より、保護者自身も教育
に参画し、学校づくりに可能性と責任を持つことが必要です。
私達は、これを「開かれた学校づくり」という提言にまとめました。
―すごいですね。実際に現場の声を聞いて作った提言には説得力がありますね。
本で言うと「第三章 学校選択制はバラ色なのか」の部分ですね。
本を出せたのはなぜ?!
―しかし、本当に本にしてしまうところがすごいですね。
出版社から声がかかったのですか?
藤崎いえ、こちらからアプローチしました。
東大の学生で本を出している人がいたので、その人の話を聞いて、編集者さんに
つないでもらいました。
それで、企画書を持っていったらOKをもらいました。
ここがポイント!学生団体運営の問題
―なんだかとてもトントン拍子に進んだ感じがありますが、プロジェクトを進め
る上で問題はありませんでしたか?
藤崎いっぱいありました。
まず、政策に関する専門知識がない所からスタートしましたので、大変でした。
政策を文章にまとめるにしても、文章スキルがなくて、これまた大変でした。
半年でまとめるとなるとやはり短くて、もう少し練りこみたいという思いもあり
ます。
まだまだ消化不良なところもありました。
こういう状態で原稿を仕上げなくてはいけませんから、最後まで走りきるのは大
変でした。
―他の方々はいかがでしたか?
狩野やっぱり、本を読んで、情報を集める時間が大変でした。
でも、それをしないと品質が高められません。
この勉強会以外にもサークルや、あと新しい団体の立上げもあって、ぶっ倒れそ
うになりました。
でも、そのおかげで、時間管理とプロジェクト管理を意識するようになったと思
います。
チームをどうやって取りまとめるかとか、全体の水準を高めるためにどういう仕
事のふり方、まとめ方、話の伝え方をするかなど、本当に勉強になりました。
田代私は1年生だったので、何もかもはじめての経験でした。
たくさんの本を読まなければならない。本当に大変でした。
レポートを書くのもなれていませんでした。5,000字が最高です。
この勉強会を経験してから他のサークルとか団体に行っても力がついているのが
わかりますので、やってよかったと思いました。
すごく勉強になったのは、「コンセプト」とか「目的」って重要なんだと言うこ
とです。
一見形式的なコンセプトでも、それに立ち返るのが大事だと分かりました。
プロジェクトの途中で、「私たち、何のためにやってるんだったっけ?」という
ことがしばしばあったのですが、その都度コンセプトに立ち返って、最後まで到
達することが出来ました。
藤崎これは私の責任だと思います。
最初、コンセプトがグダグダに始まってしまったのと、「出版する」という最終
ゴールをきちんと伝えずに始めてしまったのです。
途中で、冒頭でお話したようなコンセプトをしっかりと共有して、出版という到
達地点を明確にしたので、そこから随分スムーズになりました。
あと、スケジュール管理が大変でした。
出版をした後には、こんなこともできる
―みなさん、プロジェクトを通じて、様々なことを学ばれたようですね。
本を出版した後のアクションは何かありますか?
藤崎代議士の先生にプレゼンして、プロモーションして回りました。
田代最初は、ホームページのリンクを貼って欲しいというようなお願いをして
いきました。
そうこうしていると、「本気だったら議員に持っていけ」と言われて、実際に代
議士の先生方が30~40人居るところでプレゼンさせていただきました。
―共感してくれる先生がたはいたのですか?
田代政治家のパワーに圧倒されてしまいました(笑)
政治家の方からは、主義やイデオロギーについて聞かれて、個別の政策を突っ込
んで議論するということにはつながりませんでした。
藤崎現段階では、この勉強会はここで一旦終了させることにしました。
団体としての目標は出版を実現したことで達成しました。
あとは、メンバーそれぞれがここで学んだことを活かして行く段階です。
―素晴らしいですね。
勉強会というと、終わりが見えずにだらだらと続いて、いつの間にか自然消滅す
るものも多いと思いますが、プロジェクト型の勉強会という形態は目からウロコ
でした。
本日はどうもありがとうございました。
藤崎、狩野、田代ありがとうございました。
今回インタビューをさせていただいた「学生による教育再生会議」のメンバー
東大教育学部4年生 藤崎晃さん
明治大学法学部3年生 狩野智明さん
慶応大学法学部2年生 田代奈々子さん